バッカルファット除去後の注意事項とは、口の中の切開から頬の脂肪(バッカルファット)を取り除いたあと、傷が落ち着くまで気をつけていただきたい生活上のルールです。
この手術は皮膚を切らず、口の中の小さな切開だけで行うため、外から見える傷跡は残りません。そのかわり傷が口の中にあるので、食事・うがい・歯磨きといった「口まわりの過ごし方」が、そのまま回復の早さにつながります。この記事では、マイン美容外科が患者様にお渡ししている9項目の注意事項を、「なぜそうしていただく必要があるのか」という理由と、時期別の目安をあわせてご説明します。
目次
バッカルファット除去後の注意事項|まず押さえる3つの原則
項目が9つあると多く感じられるかもしれませんが、理由はとてもシンプルです。守っていただきたいことは、次の3つに集約されます。
- 傷は「口の中」にあります:口の中はもともと細菌の多い場所です。食後にうがいをして食べかすを残さないことが、いちばん確実な感染対策になります。
- 頬に圧力をかけません:舌で触る、指で押す、強くこする、ストローで吸う、唾を強く吐く。どれも手術した部分に圧力がかかり、出血や治りの遅れにつながります。
- 最初は冷やし、落ち着いてから温めます:順番が逆になると、内出血とむくみが長引きます。手術当日を含めて3日目までは冷湿布、それ以降は温湿布です。
バッカルファットは、頬の奥にある脂肪のかたまりです。バッカルファットの解剖については、Zhang(2002)がPlastic and Reconstructive Surgery誌で詳しく報告しています。この脂肪は口の中の切開から、唾液の通り道(耳下腺管)や表情を動かす神経を傷つけずに取り出せる位置にあります。皮膚を切らずに済むのはこのためですが、その分だけ「口の中の傷をどう守るか」が回復の鍵になります。
ダウンタイムの経過|時期別の回復スケジュール(当日〜1ヶ月)
| 時期 | 目安の状態 | この時期にすること |
|---|---|---|
| 手術当日 | 麻酔が切れて違和感が出はじめます | 冷湿布。頭を心臓より高くして仰向けで休む。洗顔・シャワーは当日から可能 |
| 手術後2〜3日 | 腫れと内出血がだんだん強くなります | 冷湿布を継続(当日を含めて3日目まで)。食後は毎回うがい。翌日から化粧が可能 |
| 手術後3日〜1週間 | 腫れがピークを越えます | 4日目からは温湿布に切り替え。歯ブラシでの歯磨きは3日後から。刺激の強い飲食物は7日間お控えください。睡眠時の姿勢は1週間まで仰向け。日常生活はおよそ1週間後から |
| 手術後2〜3週間 | 腫れと内出血が徐々に落ち着きます(2〜4週間かけて) | 軽い運動を再開できます。糸くずが気になる場合は2週間後にご来院ください |
| 手術後1ヶ月 | 傷が安定してきます | 激しい運動・サウナ・飲酒・喫煙・ストローが解禁になります。口の中の清潔はこの1ヶ月が特に大切です |
表はあくまで目安です。腫れの出方や引き方には個人差があり、体質や手術の範囲によって前後します。「思ったより腫れている」と感じられたときも、まずはこの表と照らし合わせてご確認ください。
1. 手術後の姿勢
1)手術後1週間までは、睡眠時に首が曲がらないようにして、上半身を起こし、頭を心臓より高く保ってください。そうすることで、むくみが引きやすくなります。
2)横向きに寝たりうつ伏せになったりせず、顔を天井に向けてお休みください。
むくみは水分ですので、重力の影響を受けます。頭が心臓より低い位置にあると、顔に水分が集まって腫れが強く見えます。枕をいつもより一段高くする、背中にクッションを入れて上半身を少し起こす、といった工夫だけでも朝の腫れ方が変わります。
横向きやうつ伏せを避けていただく理由は別にあります。この姿勢では、片側の頬に長い時間、体重がかかり続けます。手術した部分に圧力をかけないという原則から外れてしまうため、最初の1週間は仰向けを意識してください。「気づいたら横を向いて寝ていた」というご相談はよくいただきますが、一晩の寝返りで結果が変わるわけではありません。慌てずに、翌日から仰向けに戻していただければ大丈夫です。抱き枕や丸めたタオルを体の横に置くと、寝返りを防ぎやすくなります。
2. 手術後の食事|ダウンタイム中に控えるもの・食べやすいもの
1)一般的な食事はすべて可能ですが、7日間は辛い物や熱い物など、刺激の強い飲食物はお控えください。その後は通常どおりのお食事に戻していただけます。
「食べてはいけないもの」が決まっているわけではありません。気をつけていただきたいのは、刺激と噛む力の2つです。
傷は口の中にあり、皮膚のように厚い覆いがありません。辛い物の刺激や熱い物の温度は、その傷に直接あたります。痛みが強く出たり、腫れが長引いたりする原因になるため、最初の7日間はお控えください。塩分の多いお食事も、むくみが引きにくくなる原因になります。
もう1つが噛む力です。硬いパン、ステーキ、ナッツ、せんべい、氷など、強く噛む必要がある食品は、頬の組織を大きく動かします。大きく口を開ける食べ方(分厚いハンバーガーなど)も同じです。最初の1週間ほどは控えめになさるのが安心です。
- おすすめ:おかゆ、スープ(熱すぎない温度に冷ましてから)、豆腐、卵料理、ヨーグルト、やわらかく煮た野菜、白身魚など、あまり噛まずに食べられるメニュー
- 7日間お控えいただくもの:唐辛子を使った料理、キムチ、カレー、熱いスープや鍋、硬くて強く噛む食品
- 飲み物:水分はふだんどおりしっかりお摂りください。ただしストローは約1ヶ月お使いにならないでください(吸う動作が口の中に圧力をかけます)
そして、食事のたびに必ずうがいをしてください。これは、次にご説明する感染対策の中心でもあります。
3. むくみの管理
1)手術後2〜3日間はだんだん腫れやあざが強くなり、その後2〜4週間にかけて徐々に落ち着きます。引き方には個人差があります。
2)手術当日を含めて手術後3日目までは冷湿布を、それ以降は温湿布をご使用ください。
(当院からお渡しした湿布パックをお使いください。温湿布は、ホットアイマスク(温熱アイマスク)をご利用いただくか、お渡しした湿布パックを電子レンジで15秒ほど温めてお使いください)
順番に意味があります。手術直後は、冷やして血管を縮めることで内出血とむくみの広がりを抑えます。形成外科の専門書でも、術後早期は冷やすことがむくみを抑えるのに役立つとされています。腫れがピークを越えた4日目からは反対に温めて血流を促し、たまった水分と内出血の吸収を早めます。逆の順番にすると、最初に血流を増やしてしまうため、内出血が広がって回復が遅くなります。
- 冷湿布も温湿布も、頬に強く押しあてないでください。そっと当てるだけで十分です。
- 保冷剤を直接肌に当てず、タオルなどで包んでください。冷やしすぎもかえって負担になります。
- 電子レンジで温める際は、必ず温度を確かめてからお使いください。
- 「腫れが2〜3日目まで強くなる」のは想定内の経過です。3日目がいちばん腫れて見えることが多く、そこから引きはじめます。
4. 傷の管理と口の中の清潔
1)舌で手術部位に触れないでください(感染のおそれがあります)。
2)口の中の切開を通じて手術を行いますので、炎症や感染を防ぐために、食後は毎回うがいをしてください。約1ヶ月間は、口の中を清潔に保つことがとても重要です。
3)歯ブラシでの歯磨きは手術後3日後から可能です。ただし、歯ブラシの毛が直接傷の部分に触れないようご注意ください。
口の中には、もともとたくさんの細菌がいます。歯科や口腔ケアの分野では、食後に口をすすいで食べかすを残さないことが、細菌の増殖を抑える基本とされています。傷が口の中にある手術では、この当たり前のケアがそのまま感染予防になります。
- うがいはやさしく:強くブクブクとすすぐと、頬に圧力がかかります。水やうがい薬を口に含み、そっと動かしてから吐き出してください。吐き出すときも勢いをつけないでください。
- うがい薬を処方された場合:ご案内した使い方を守ってください。市販のうがい薬に切り替えたいときは、事前にご相談ください。
- 歯磨きは3日後から:前歯やほかの歯はふだんどおりで構いませんが、傷のある奥のほうは、毛先が当たらないよう避けてください。
- 舌で確認しない:気になって舌で傷を探ってしまう方が多くいらっしゃいます。触るたびに刺激になり、治りが遅れて感染のリスクが上がります。
5. 洗顔・シャワー・化粧
1)当日から洗顔およびシャワーが可能です。
2)翌日から化粧ができます。洗顔の際、バッカルファットを取った部分は強くこすらず、圧力をかけないようやさしく扱ってください。
3)サウナ(銭湯)は手術後1ヶ月間お控えください(感染のおそれがあります)。
傷が口の中にあるため、顔の外側は当日から普通に洗っていただけます。ここは多くの方が心配される点ですが、こすらなければ問題ありません。指の腹でやさしく、ぬるめのお湯で短時間に済ませてください。熱いお湯を長く浴びると血流が増えて腫れやすくなるので、シャワーもぬるめが安心です。
お化粧は翌日から可能です。頬にファンデーションをのせるときは、スポンジで押し込まず、置くようにのせてください。クレンジングも同じで、こすらずになじませて落とします。なお、プールなど顔を水につける環境も、サウナと同じく感染のリスクがありますので、再開の時期は診察の際にご相談ください。
6. 運動
1)日常生活は手術後およそ1週間後から可能で、軽い運動は手術後2〜3週間目から、激しい運動は1ヶ月後から可能です。
運動を控えていただく理由は2つあります。1つは血圧と血流です。体を強く動かすと血圧が上がり、傷の周りの血流が増えて、出血や腫れにつながります。もう1つは力む動作です。重いものを持ち上げるときのように息を止めて力むと、口の中にも圧力がかかります。
- 手術後1週間まで:デスクワークや家事など、ふだんの生活動作が中心です。
- 手術後2〜3週間目から:ゆっくりした散歩や軽いストレッチなど、息が上がらない程度の運動から再開してください。
- 手術後1ヶ月から:ランニング、筋力トレーニング、球技など、強度の高い運動が可能になります。ウエイトトレーニングは特に力む動作が多いため、この時期まで待っていただくのが安全です。
- ホットヨガや岩盤浴:温熱環境ですので、サウナと同じく手術後1ヶ月を目安にお考えください。
7. 薬の服用
1)お帰りの際にお渡ししたお薬は、手術後、最初のお食事の30分後にお飲みください。その後は決められた時間に規則的に服用してください。お薬を飲んで下痢やアレルギーなどの症状が現れた場合は、当院までご連絡ください。
2)アスピリンやビタミンEは出血の原因になるため、手術後1週間はお控えください。
形成外科の専門書でも、アスピリンや一部の解熱鎮痛薬、魚油、一部のサプリメントは、出血や内出血が起こりやすくなる要因として挙げられています。ビタミンEのサプリメントも同じ理由でお控えいただきます。空腹のまま薬を飲むと胃に負担がかかりやすいため、食後の服用をご案内しています。
⚠️ ご注意ください:高血圧や心臓の病気などで日常的に服用されているお薬(血液をさらさらにするお薬を含みます)を、ご自身の判断で中止したり再開したりしないでください。中止の可否は、処方されている主治医の先生の判断が必要です。手術前のカウンセリングで必ずお知らせいただき、術後の再開時期についても当院と主治医の先生にご確認ください。
8. 飲酒と喫煙
1)飲酒と喫煙は出血・傷の回復・感染に悪い影響を与えるため、手術後1ヶ月間はお控えください。
この1ヶ月は、9項目の中でも特にご協力をお願いしたい部分です。それには、はっきりとした理由があります。
たばこに含まれるニコチンには、血管を細くするはたらきがあります。血管が細くなると、傷を治すために必要な血液と酸素が届きにくくなります。さらに煙に含まれる一酸化炭素は、血液が酸素を運ぶのを邪魔します。創傷治癒(傷が治る仕組み)についての医学文献では、こうした理由から喫煙者は傷の治りが遅れやすく、感染も起こりやすいと説明されています。加熱式たばこや電子たばこでもニコチンを摂取しますので、同じようにお控えください。
アルコールについても、手術後の傷の感染や治りにくさとの関連が報告されています。加えて、飲酒は血流を増やして腫れと内出血を強めます。処方されたお薬を服用している期間でもありますので、この1ヶ月はお休みしていただくのが安全です。
9. 経過とご来院の目安
1)口の中は溶ける糸で縫合しますので、抜糸のためのご来院は必要ありません。ただし糸くずが長く、舌に当たって刺激になる場合は、2週間後にご来院いただければ取り除きます。
2)ストローの使用は約1ヶ月間お控えください。また、唾を強く吐いたり、口の中に圧力をかけたりしないでください(手術部位から出血することがあります)。
3)手術後、手術部位に圧力をかけないでください。
4)手術した部位を刺激しないでください。
(舌で切開した部分を探って確認したり、唇をめくって傷を見たりされる方がいらっしゃいますが、刺激が加わると治りが遅くなり、感染のおそれがあります)
「圧力をかけない」という項目が繰り返し出てくるのは、それだけ大切だからです。ストローで吸う、唾を強く吐く、うがいを強くする、頬を指で押す、舌で傷を探る。どれも一瞬の動作ですが、口の中の傷にとっては同じ意味を持ちます。手術直後は出血に、少し経ってからは治りの遅れにつながります。
すぐに当院へご連絡いただきたいサイン
ここまでご説明した経過は、いずれも想定の範囲内のものです。一方で、次のような症状が出た場合は、様子を見ずにすぐにご連絡ください。
- お薬を飲んだあとに下痢やアレルギーなどの症状が現れた
- 腫れが日ごとに引くのではなく、片側だけ急に強くなってきた
- 痛みが和らぐのではなく、日を追って強くなっていく
- 熱が出た、傷から膿のようなものが出る、強いにおいがする
- 口の中の出血が止まらない
すべての手術には、一定のリスクが伴います。ご心配な点は、ご自身で判断される前に当院へご相談ください。日本語スタッフが対応いたします。
よくあるご質問
腫れはいつまで続きますか?ダウンタイムの目安を教えてください
腫れとあざは手術後2〜3日間かけてだんだん強くなり、そこから2〜4週間にかけて徐々に落ち着きます。3日目がいちばん腫れて見えることが多く、4日目から温湿布に切り替えると腫れが引きやすくなります。ただし個人差がありますので、表の時期はあくまで目安としてご覧ください。
翌日は何ができますか?お化粧はいつからできますか?
洗顔とシャワーは手術当日から、お化粧は翌日から可能です。ただし日常生活への復帰はおよそ1週間後を目安にご案内しています。翌日はちょうど腫れが強くなっていく時期にあたりますので、ご予定は余裕を持って組んでいただくと安心です。
食事はどうすればいいですか?いつから普通に食べられますか?
一般的な食事はすべて可能です。ただし7日間は、辛い物や熱い物など刺激の強い飲食物と、強く噛む必要のある硬い食品をお控えください。8日目からは通常のお食事に戻していただけます。ストローだけは約1ヶ月お使いにならないでください。
運動やトレーニングはいつから再開できますか?
軽い運動は手術後2〜3週間目から、激しい運動は1ヶ月後から可能です。ウエイトトレーニングのように息を止めて力む運動は、口の中にも圧力がかかるため、1ヶ月を待ってから再開してください。それまではゆっくりした散歩や軽いストレッチにとどめていただくと安心です。
歯磨きとうがいは、どのようにすればよいですか?
うがいは手術直後から、食後に毎回行ってください。強くブクブクせず、そっと含んで吐き出すのがコツです。歯ブラシでの歯磨きは3日後から可能で、毛先が傷に直接触れないようご注意ください。口の中の清潔は、約1ヶ月間続けていただきたい習慣です。
お酒とたばこは、いつから大丈夫ですか?
どちらも手術後1ヶ月間はお控えください。たばこのニコチンは血管を細くして傷に届く血液と酸素を減らし、アルコールは腫れと内出血を強めます。回復の速さに直接かかわる部分ですので、この期間だけはご協力をお願いいたします。サウナ・銭湯も同じく1ヶ月間はお控えください。
体重が減ったら、頬はこけて見えますか?
体重の増減で頬の見え方が変わるのは、手術を受けていない方にも共通することです。そのうえで、形成外科の専門書には、バッカルファットを取りすぎると頬がこけて疲れた印象になることがあると指摘されています。だからこそ、どのくらい取るかは診察のうえで慎重に決める必要があります。ご心配な点はカウンセリングでご相談ください。
うっかり舌で傷を触ってしまいました。大丈夫でしょうか?
一度触れた程度で結果が変わることは、あまりありません。まずはご安心ください。そのうえで、これからは触らないよう意識してください。ただし、そのあとに出血が続く、痛みが強くなる、腫れが片側だけ強くなるといった変化があれば、早めにご連絡ください。
※ 手術後の管理は手術と同じくらい大切ですので、ご協力をお願いいたします。
※ ご不明な点がございましたら、いつでもお気軽に当院までお問い合わせください(Tel: +82-2-516-1175/日本語スタッフ対応)。
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