糸リフト手術後の注意事項

糸リフト手術後の注意事項とは、挿入した糸(スレッド)が皮下組織にしっかり固定されるまでのおよそ1ヶ月間、傷口とフェイスラインを守るために心がけていただきたい生活上のルールです。糸リフトは大きな切開を伴わない負担の少ない手術ですが、引き上げた組織が落ち着くまでには時間が必要で、この時期の過ごし方が仕上がりを大きく左右します。

マイン美容外科では、手術そのものと同じくらい術後の管理を重視しています。この記事では、当院が患者様にお渡ししている9項目の注意事項をもとに、「なぜそうしていただく必要があるのか」という理由と、時期別の回復の目安をあわせてご説明します。

糸リフト手術後の注意事項|まず押さえる3つの原則

項目は多いように見えますが、理由はとてもシンプルです。守っていただきたいことは、次の3つに集約されます。

  • 引っ張らない・ずらさない:糸には「コグ」と呼ばれる細かい返しが付いていて、皮下の組織を引っ掛けて持ち上げています。強くこする、大きく口を開ける、うつ伏せで顔を押しつけるといった動作は、この引っ掛かりをずらす原因になります。
  • 温めない・腫らさない:手術直後の熱刺激や血流の急な増加は、内出血とむくみを長引かせます。最初の数日をどう過ごすかで、腫れが引くまでの日数が変わります。
  • 清潔を保つ:糸は体内にしばらく残る医療材料です。専門書でも、糸リフトでは清潔な操作が何より大切だと強調されています。

海外の系統的レビュー(Dermatologic Surgery誌 2025年、吸収糸を使った糸リフトが対象)には、論文に有害事象として報告された割合がまとめられています。報告が多かった症状は、内出血19.5%、むくみ16.8%、押したときの痛み(圧痛)10.0%の順でした。感染は2.5%、知覚の違和感は1.1%、血腫は0.6%です。ただしこれは各研究が合併症として記録した割合であり、患者様全体での発生率ではありません。軽い腫れや内出血そのものは多くの方に生じますが、その多くは時間とともに和らいでいきます。引くまでの期間や程度には個人差があります。

時期別の回復スケジュール(当日〜3ヶ月)

時期目安の状態この時期にすること
手術当日違和感と軽い腫れが出始めます冷湿布。枕を高めにして仰向けで休む。洗顔・メイクは翌日から可能
1〜3日目腫れと内出血がピークになります冷湿布を継続。保護テープは2日後に剥がす
4日〜1週間腫れが引き始めます温湿布に切り替え。ぬるめのシャワーを短時間で
2週間むくみの大部分が落ち着きます横向きで寝ても大丈夫な時期。軽いウォーキング可
1ヶ月糸と組織が安定してきます激しい運動・サウナ・カラーリング・パーマが可能になります
3ヶ月硬さやつっぱり感が和らぎますウルセラなどのHIFU・高周波の機器施術が可能になります

形成外科の専門書では、糸リフト後のむくみは多くが2週間以内に落ち着くとされています。ただし腫れの引き方には個人差があり、体質や糸の本数、手術の範囲によって前後します。表はあくまで目安としてご覧ください。

1. 手術後の姿勢

1)手術後2週間までは、横向きに寝たりうつ伏せになったりせず、顔を天井に向け、仰向けでお休みください。

横向きやうつ伏せで寝ると、片側の頬に長時間体重がかかり続けます。まだしっかり固定されていない糸の位置がずれ、左右差の原因になることがあるため、この2週間だけは仰向けを意識してください。枕をいつもより少し高くして、頭が心臓より高い位置にあるようにすると、むくみが引きやすくなります。

「気づいたら横向きで寝てしまっていた」というご相談も、よくいただきます。一晩の寝返りですぐに結果が変わるわけではありませんので、まずは慌てずに翌日から仰向けに戻してください。抱き枕やタオルを体の横に置くと、寝返りを防ぎやすくなります。ただし、片側だけ痛みが強い場合や、見た目の左右差が出てきた場合はご連絡ください。

2. 手術後の食事

1)一般的な食事はすべて可能ですが、刺激の強い食べ物は控えてください。

食べてはいけないものが決まっているわけではありません。気をつけていただきたいのは「噛む力」と「塩分」です。硬いパン、ステーキ、するめ、氷など強く噛む必要がある食品は、頬の組織を大きく動かすため、最初の1週間ほどは控えめになさるのが安心です。辛いものや塩分の多い食事は、むくみが長引く原因になります。

おすすめは、おかゆ、スープ、豆腐、卵料理、やわらかく煮た野菜など、あまり噛まずに食べられるメニューです。水分はふだんどおりしっかり摂っていただいて構いません。

3. むくみの管理

1)術後2〜3日間はだんだんと腫れやあざがひどくなり、その後2〜4週間かけて徐々に治まりますが、個人差があります。

2)手術当日を含め術後3日目までは冷湿布をして、それ以降は温湿布をしてください。
(お渡しした湿布パックを使って湿布してください。)
(温湿布は、睡眠温熱眼帯を利用するか、お渡しした湿布パックを電子レンジで15秒ほど温めてください。)

冷やす時期と温める時期を分けるのには理由があります。最初の3日間は、血管を縮めて内出血の広がりとむくみを抑えるのが目的です。4日目以降は逆に血流を促し、たまった内出血の吸収を早めるために温めます。順番を逆にすると、かえって腫れが強くなることがあります。

冷やすときは保冷剤を直接肌に当てず、タオルなどを一枚はさんで1回15〜20分程度にしてください。長時間当て続けると皮膚を傷めることがあります。文献上は、術後の内出血を軽くする方法として、飲酒を控えること、運動を避けること、こまめに冷やすことが挙げられています。

4. 傷跡の管理(保護テープはいつまで?)

1)抜糸の必要はありません。貼ってある保護テープ(ハイドロコロイド素材の創傷被覆材)は2日後に剥がしてください。

糸リフトは糸を通す入口が数ミリの針穴で済むため、通常は抜糸がありません。保護テープを貼ったままにしておく必要もなく、2日後を目安に剥がしていただければ十分です。その後に新しいテープを貼り替える必要はありません。

剥がした直後に赤みや小さなかさぶたが残っていることがありますが、無理にこすらず、自然に落ちるのを待つのが安心です。針穴の跡は数週間かけて目立たなくなっていきます。赤みが残っている間は日焼け止めや帽子で紫外線を避けると、色素沈着を防ぎやすくなります。

5. 洗顔及びシャワー

1)洗顔及びシャンプーは手術後の翌日から可能です。

2)リフトした部位は、約1ヶ月間強くこすらないようにしてください。

3)サウナは感染の恐れがあるため、術後1ヶ月間は禁止です。

4)メイク及びコンタクトレンズの着用は翌日から可能です。

洗顔もシャンプーも翌日から可能ですが、当日だけは避けてください。シャンプーのときは爪を立てず、指の腹でやさしく洗います。こめかみ側に糸を入れている場合、髪の生え際を強く動かすと痛みが出ることがあります。

熱いお湯や長風呂では血流が増えて腫れが強くなるため、最初の1週間はぬるめのシャワーを短時間で済ませるほうが安心です。サウナ・岩盤浴・ホットヨガを1ヶ月控えていただくのは、高温多湿の環境が感染のリスクを高めるうえ、腫れも長引かせるためです。

6. 運動

1)日常生活はすぐに可能で、軽いウォーキング運動は手術後1〜2週間後から、激しい運動は1ヶ月後から可能です。

激しい運動を控えていただくのは、血圧が上がって血流が増え、内出血やむくみが強くなるからです。加えて、走る・跳ぶといった動きの振動や、力むときの顔の緊張は、まだ固定されていない糸に負担をかけます。ジョギング、筋力トレーニング、ゴルフ、テニスなどは1ヶ月後が目安です。デスクワークや家事、通勤といった日常生活は翌日から問題ありません。

7. 薬の服用

1)お帰りの際にお渡ししたお薬は、手術後の最初のお食事から30分後に飲み始め、その後は決まった時間に規則正しく服用してください。
薬を飲んだ後、下痢やアレルギーなどの症状が出たら、当院までご連絡ください。

2)手術後1週間は、出血の原因となるアスピリンやビタミンEの服用は控えてください。

アスピリンやビタミンEには血液を固まりにくくする働きがあり、内出血が広がりやすくなります。ただし、持病のために毎日お飲みになっている薬がある方は、自己判断で中止しないでください。手術前のカウンセリングで必ずお申し出いただき、主治医と当院の指示に従って調整します。

8. 飲酒と喫煙

1)飲酒と喫煙は出血、傷の回復と感染に悪影響を与えるため、手術後1ヶ月間は禁じます。

アルコールは血管を広げるため、腫れと内出血が増えます。たばこは逆に血管を縮めて傷の周りの血流を減らし、治りを遅らせます。どちらも回復にとってはマイナスに働くため、少なくとも最初の1ヶ月は控えていただくのが安心です。

9. 経過

1)お肌が引き締まる感じや鈍い感じは、正常な回復過程であり、時間が経つにつれてだんだん良くなります。(1ヶ月目で最も強く感じられます。)

2)リフトした手術部位が硬くなったり、一時的にデコボコに見えることがあり、時間の経過とともに好転します。

3)ディンプル(えくぼのようなへこみ)は一時的に生じることがあり、1ヶ月ほど経過してから良くなり始めます。無理に触らないでください。

4)頭痛がひどい場合は、タイレノールを追加で服用してください。

5)稀に口元の神経が刺激されて口元が上がらなくなることがあり、2〜3ヶ月にわたって良くなるので、あまり心配なさらないでください。

6)カラーリングやパーマは1ヶ月後から可能です。

7)口を大きく開けたり、刺激になるような表情は痛みを誘発することがあるため、約1ヶ月間は注意してください。歯科の治療で長時間口を開ける予定がある場合は、できれば1ヶ月ほど先に延ばしていただくと安心です。

8)マッサージや圧迫を加える行為は1ヶ月間気をつけてください。エステでのフェイシャルや、リンパを流す施術も同じ理由でお控えください。

9)ウルセラをはじめとするHIFU(高密度焦点式超音波)や、高周波(RF)などの熱を加える機器施術は、3ヶ月間ご遠慮ください。熱エネルギーが皮下に加わることで、まだ残っている糸に影響する可能性があるためです。

糸の種類(PDO・PLLA・PCL)による違い

糸リフトに使われる糸の多くは、体内で少しずつ分解・吸収される医療用の素材でできています。代表的な3種類の違いを整理しました。

素材特徴吸収の目安
PDO(ポリジオキサノン)最も広く使われている素材。挿入後は体内の水分でゆっくり分解されますおよそ6〜8ヶ月
PLLA(ポリ乳酸)時間をかけて分解されながら、コラーゲンの生成を促すとされる素材。糸のほか注入剤としても使われていますPDOより長く、コラーゲンの生成は数ヶ月かけて進みます
PCL(ポリカプロラクトン)やわらかい素材。PDOより長く体内にとどまることを狙って開発されました3種のなかでは新しい素材で、PDOより長く残るとされます

いずれも吸収される素材ですが、糸が吸収されたからといって、その時点で効果がなくなるわけではありません。糸が入っている間に周囲でコラーゲンが作られるため、効果は時間をかけて緩やかに落ちていきます。なお、吸収されない永久糸については、2年以上経ってからしこり(肉芽腫)ができた例が専門書に報告されています。

術後の注意事項そのものは糸の種類で大きく変わりません。ただし、素材や糸の形状によって腫れ・内出血の出やすさに差があることが報告されています。ご自身に使われた糸の種類が気になる方は、カウンセリングのときや術後の診察でお気軽にお尋ねください。

すぐに当院へご連絡いただきたいサイン

  • 38度以上の発熱がある、傷口の赤み・熱感・膿が日を追って強くなる(感染の可能性)
  • 糸の先端が皮膚から出てきた、チクチクする異物感が続く(糸の露出の可能性)
  • 左右差がはっきりしていて、日が経っても改善しない
  • 痛みが日ごとに強くなる、片側だけ急に大きく腫れてきた
  • 3日を過ぎても内出血が広がり続けている

感染は、清潔な操作を行っていても起こりうるものだと、形成外科の教科書にも記されています。その場合は抗生剤による治療と慎重な経過観察が必要になり、改善しないときは糸を抜くことも検討されます。いずれのサインも、早くご相談いただくほど対応の選択肢が広がります。ご自身で糸を引っ張ったり押し込んだりせず、まずはご連絡ください。すべての手術には一定のリスクが伴います。

よくある質問(糸リフト手術後の注意事項)

保護テープはいつまで貼りますか?

貼ってある保護テープは、手術の2日後を目安に剥がしてください。それ以降、新しく貼り替える必要はありません。剥がした後に赤みが残っていても、こすらずにそのままお過ごしいただければ大丈夫です。

横向きで寝るのはいつからできますか?

手術後2週間は仰向けでお休みください。2週間を過ぎれば、横向きで寝ていただいて問題ありません。それまでは抱き枕や丸めたタオルを体の横に置くと、寝返りを防ぎやすくなります。

シャンプーは当日からできますか?

洗顔もシャンプーも手術の翌日から可能です。当日は避けてください。翌日以降も、爪を立てずに指の腹でやさしく、ぬるめのお湯で短時間に済ませるのが安心です。

腫れはいつまで続きますか?

腫れと内出血は2〜3日でピークを迎え、その後2〜4週間かけて徐々に落ち着きます。ただし引き方には個人差があります。

うっかり顔をマッサージしてしまいました。大丈夫でしょうか?

一度触った程度で結果が変わることはあまりありません。まずは落ち着いていただいて大丈夫です。そのうえで、手術後1ヶ月間は圧迫やマッサージをお控えください。ただし、そのあとに痛み・左右差・へこみが出てきた場合は、早めにご連絡ください。

食事に制限はありますか?

基本的にすべて召し上がっていただけます。ただし、辛いものなど刺激の強い食べ物と、硬くて強く噛む必要のある食品は、最初の1週間ほど控えめにしてください。やわらかく、あまり噛まずに食べられるメニューがおすすめです。

お酒とたばこはいつから大丈夫ですか?

どちらも手術後1ヶ月間はお控えください。アルコールは腫れと内出血を増やし、たばこは傷の治りを遅らせます。回復の速さに直接かかわる部分ですので、この期間だけはご協力をお願いいたします。

※ 手術後の管理は手術と同じくらい重要ですので、ご協力をお願いいたします。
※ ご不明な点がございましたら、いつでもお気軽に当院までお問い合わせください。

関連記事・参考資料

参考資料:一般社団法人 日本美容外科学会(JSAPS)Ojha AS, Farahbakhsh N, Saikaly SK. An Assessment and Comparison of Adverse Effect Rates in Differing Absorbable Thread Lift Suture Materials. Dermatol Surg. 2025;51(3):272-276.

※ 本コンテンツは情報提供のみを目的としており、医療上の診断や治療に代わるものではありません。施術結果には個人差があり、副作用が生じる可能性があります。詳しくは専門医にご相談ください。

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