フェイスリフトの危険な症状とは、術後に血腫(皮下に血がたまる状態)・感染・皮膚壊死・顔面神経の一時的な麻痺など、早めの受診が必要な合併症を知らせるサインのことです。
「この腫れは普通なのか、それとも病院に連絡すべきなのか」。フェイスリフトを受けた患者様、とくに手術後に日本へ帰国される患者様から、いちばん多くいただくご質問です。
形成外科専門医の李聖郁(イ・ソンウク)です。この記事では、私が診察室で退院前の患者様にお話ししている内容をそのままお伝えします。「様子を見てよい腫れ」と「すぐ連絡すべき症状」の違い、そしてそれぞれがどのくらいの確率で起きるのかを、形成外科の教科書データをもとにやさしく整理しました。フェイスリフト全般についてはフェイスリフトの記事一覧もあわせてご覧ください。
フェイスリフトの危険な症状はどのくらいの確率で起きる?— 教科書3,500例のデータ
漠然とした不安は、具体的な数字を知ることで小さくなります。そこで私はカウンセリングで、まず数字をお見せするようにしています。形成外科の教科書には、Baker DC が外側SMAS切除(SMAS=表情筋を包む筋膜の層の一部を切り取って引き上げる方法)によるフェイスリフト3,500例を集計した合併症のデータがまとめられています。

血腫(皮下に血がたまる):女性約1.5%・男性約4.0%
Baker DC の教科書3,500例データでは、フェイスリフト後の血腫は女性約1.5%・男性約4.0%に起きています。血腫はフェイスリフトでもっとも多い合併症で、教科書でも「最も頻度の高い合併症」と位置づけられています。
男性で多いのは、ひげの毛包(毛根を包む組織)のまわりに細かい血管が多く、さらに高血圧の方の割合も高いためと説明されています。男性特有の注意点は男性のフェイスリフトと血腫リスクで詳しく解説しています。
血腫の多くは手術直後の早い段階で見つかります。小さなものは自然に吸収され、大きなものも早めに血を抜く処置をすれば回復していきます。
皮膚壊死・感染・顔面神経の一時的な麻痺の確率
同じデータでは、皮膚の一部が弱って傷む皮膚壊死(スラフ)が約2.0%、感染が約1.0%、耳たぶや耳の後ろ・こめかみの傷跡を整える修正が約2.0%と報告されています。
多くの方がいちばん心配される顔面神経(表情をつくる神経)の一時的な麻痺は、同じ教科書データで約0.1%、つまり1,000人に1人ほどです。しかも報告された例はすべて6ヶ月以内に回復しています。
皮膚壊死は、喫煙される方や糖尿病のある方に集中する傾向があります。教科書では、すでに起きてしまった皮膚壊死も多くは保存的な治療(手術ではなく、清潔に保ち経過を見る治療)で自然に治り、必要であれば後から傷跡を整えるとされています。
研究によって数値が違う理由
別の教科書シリーズでは、血腫は女性2〜3%、男性では最大8%と報告されており、研究によって数値に差があります。同じ教科書では、ていねいな手術と術後の血圧管理によって男性の血腫を4%程度まで下げられるとも述べられています。
数値が違うのは、対象の患者様、術式、何を「血腫」と数えたかが研究ごとに異なるためです。どの数字も大規模な集計の平均値であり、お一人おひとりの体質や健康状態によって実際の経過は変わります。
李聖郁院長のポイント:フェイスリフトの危険な症状の中で最も多いのは血腫です。一方、もっとも怖がられる顔面神経の麻痺は約0.1%とまれで、報告例はすべて回復しています。
すぐ病院に連絡すべきフェイスリフトの危険な症状5つ(チェックリスト)
フェイスリフトの合併症は「どれだけ早く気づけるか」で経過が大きく変わります。私は退院前の患者様に、次の5つだけは覚えて帰ってくださいとお願いしています。ひとつでも当てはまれば、迷わず当院までご連絡ください。
- 片側だけが急に腫れて硬くなる(血腫)
- 張り感・痛みがどんどん強くなる(血腫の進行)
- 目が閉じにくい・口角が片側だけ動かない状態が24時間以上続く(顔面神経)
- 皮膚が紫色・黒色に変わる、水ぶくれができる(皮膚壊死の初期)
- 38℃以上の発熱+傷の熱感・分泌物(感染)
【フェイスリフト 危険な症状 早見表】
| 危険な症状 | 疑われる合併症 | 起きやすい時期 | 取るべき行動 |
|---|---|---|---|
| 片側だけが急に腫れて硬くなる | 血腫 | 術後24時間以内が最多 | すぐに連絡・受診 |
| 張り感・痛みがどんどん強くなる | 血腫の進行 | 術後24〜48時間 | すぐに連絡・受診 |
| 目が閉じにくい・口角が片側だけ動かない状態が24時間以上続く | 顔面神経の一時的な麻痺 | 術後数日以内に気づくことが多い | 早めに連絡・受診 |
| 皮膚が紫色・黒色に変わる、水ぶくれができる | 皮膚壊死の初期 | 術後数日〜2週間 | すぐに連絡・受診 |
| 38℃以上の発熱+傷の熱感・分泌物 | 感染 | 術後数日〜2週間 | すぐに連絡・受診 |
反対に、両側がほぼ左右対称に腫れていて、日ごとに少しずつ引いていく腫れや内出血は、正常な回復の範囲です。「片側だけ」「急に」「硬く」「痛みが増す」が、様子見をやめる目安になります。

サイン1:片側だけが急に腫れて硬くなる(血腫)— 術後24時間が最重要
血腫の多くは術後24時間以内に起こります。片方の頬やあご下だけが急にふくらみ、触ると硬く感じる場合は、皮膚の下に血がたまり始めているサインです。この時期は安静にし、変化に気づいたらすぐにご連絡ください。
サイン2:張り感・痛みがどんどん強くなる(血腫の進行)
術後の痛みは、普通は日ごとに和らいでいきます。それとは逆に、張りつめるような痛みが時間とともに強くなる場合は、血腫が大きくなっている可能性があります。早く見つかった血腫の多くは、局所麻酔で血を抜く処置によって回復します。
サイン3:目が閉じにくい・口角が片側だけ動かない状態が24時間以上続く(顔面神経)
手術直後は、局所麻酔の影響や腫れによって表情が少しぎこちなくなることがあります。ただし、目をしっかり閉じられない、笑ったときに口角が片側だけ上がらないといった左右差が24時間以上続く場合は、受診してください。前述のとおり、教科書データでは神経の一時的な麻痺は報告例すべてが回復しており、早めに状態を確認することが安心につながります。
サイン4:皮膚が紫色・黒色に変わる、水ぶくれができる(皮膚壊死の初期)
耳のまわりなど、皮膚を引き上げた部分が紫色や黒っぽく変わったり、水ぶくれができたりするのは、皮膚の血流が足りていない初期のサインです。喫煙される方はとくに注意が必要です。早く対応するほど、傷跡を小さく抑えやすくなります。
サイン5:38℃以上の発熱+傷の熱感・分泌物(感染)
38℃以上の発熱と傷の熱感・分泌物は感染のサインです。教科書では、フェイスリフト後の感染はまれ(1%未満)とされていますが、見つけたら早めの治療が大切です。
日本へ帰国されたあとに気になる症状が出た場合も、日本語スタッフが LINE やお電話(+82-2-516-1175)で対応しますので、ひとりで悩まずご連絡ください。写真を送っていただければ、急いで受診すべき状態かどうかを一緒に判断します。
李聖郁院長のポイント:片側だけの急な腫れ、強くなる痛み、24時間以上続く表情の左右差、皮膚の紫・黒への変色、38℃以上の発熱と傷の熱感。この5つのうちひとつでもあれば、「様子見」ではなくご連絡を。
正常な回復と危険な症状の境界線 — いつまでの変化なら心配ない?
「この程度の腫れは普通ですか?」というご質問にお答えするために、ここでは正常な経過と、フェイスリフトの危険な症状との境目だけをまとめます。日ごとの詳しい経過はフェイスリフトのダウンタイム3ヶ月の経過で解説しています。

術後1〜3日:腫れ・内出血のピーク(正常範囲)
術後1〜3日は腫れと内出血がもっとも目立つ時期ですが、左右がほぼ同じように腫れていれば正常な反応です。この時期に無理に動くと血腫のリスクが上がるため、できるだけ安静に過ごしましょう。教科書でも、術後の血圧上昇や吐き気・嘔吐を避けることが血腫の予防になるとされています。
冷却は4〜5日目まで、その後は温め(感覚が鈍い時期のやけどに注意)
術後4〜5日目までは冷やし、それ以降は温めるケアに切り替えるのがおすすめです。ただし手術の後しばらくは皮膚の感覚が鈍くなっているため、熱すぎるとやけどの原因になります。温度は必ず手で確かめてからお使いください。
最終的な輪郭・傷跡が落ち着くまでの目安
最終的な輪郭はおおむね3〜6ヶ月、傷跡は6〜12ヶ月かけて落ち着いていきます。日常生活に戻る時期は、腫れの出方やお仕事の内容によって個人差がございます。なお Baker DC の教科書データでは、1年後に一部が再びたるむ例が約2.0%と報告されています。
- 術後1〜3日:腫れ・内出血のピーク(左右対称なら正常範囲)
- 術後4〜5日目まで:冷却、その後は温めるケアへ
- 3〜6ヶ月:最終的な輪郭が落ち着く
- 6〜12ヶ月:傷跡が落ち着く
李聖郁院長のポイント:左右対称で、日ごとに引いていく変化は正常です。左右差が急に出たり、痛みが増したりするときが、連絡のタイミングです。
危険な症状のリスクを高める要因 — 血圧・喫煙・薬・術式
フェイスリフトの危険な症状の多くは、手術前の準備でかなり防ぐことができます。教科書でも、手術前に血圧・喫煙歴・出血を増やす薬やサプリメントを必ず確認するよう求めています。準備の全体像はフェイスリフト手術前の準備チェックリストにまとめています。
- 血圧:術前の収縮期血圧150mmHg超で血腫が増える
- 喫煙:皮膚の血流が下がり皮膚壊死が増える
- 薬・サプリ:血を固まりにくくする成分は血腫のリスクを高める
- 持病:糖尿病や免疫抑制剤の服用は感染・回復の遅れにつながる
- 術式:深い層を扱うほど術者の熟練度が安全性を左右する
高血圧:術前の収縮期血圧150mmHg超で血腫が増える(Rees 1994、1,236例)
術前の収縮期血圧(上の血圧)が150mmHgを超える患者様で血腫が多かったことが、1,236例を分析した研究(Rees, 1994)で報告されています。別の教科書でも、手術前後の厳格な血圧管理が血腫予防でもっとも重要だとされています。
そのため、血圧が高めの方は事前にお知らせください。コントロールされていない高血圧は、手術を延期すべき理由になります。
喫煙:皮膚の血流低下で皮膚壊死が増加 — 最低4週間の禁煙を推奨
教科書では、喫煙は皮膚の血流を下げ、皮膚壊死を大きく増やすとされています。一方で、何週間やめれば十分かという最低期間はまだはっきり決まっていません。そこで当院では、術前後最低4週間の禁煙をお願いしています。禁煙が難しい場合は、手術の時期をずらすこともご提案します。
血液をサラサラにする薬・サプリ(アスピリン・ワルファリン・オメガ3など)は約2週間前から医師と相談して中止
アスピリンやワルファリン、オメガ3のように血を固まりにくくする成分は、血腫のリスクを高めます。教科書では、抗凝固薬・抗血小板薬(血を固まりにくくする薬)を手術の1〜2週間前から避けることが血腫予防になるとされています。ご自身の判断で中止せず、必ず処方元の医師と当院にご相談ください。
また、糖尿病のある方や免疫抑制剤を服用中の方は、感染や回復の遅れのリスクがあるため、カウンセリングで必ずお知らせください。
術式による違い:SMAS部分切除 vs ディーププレーン
同じフェイスリフトでも、SMASの扱い方によって神経へのリスクは変わります。SMAS部分切除(外側SMAS切除)は、耳下腺(唾液をつくる腺)の上で操作するため、耳下腺が神経を自然に守る形になり、顔面神経へのリスクが比較的低い方法です。
ディーププレーンは、皮膚とSMAS・首の筋肉の層を別々の方向に引き上げるため、自然で長持ちしやすい反面、深い層を扱う分だけ術者の熟練度が安全性を大きく左右します。私は、手術中に神経の位置がはっきり確認できない場合、無理に深く入らず、SMASを折りたたんで固定するSMASプリケーション(SMAS plication)に切り替えます。引き上げが少し控えめになっても、神経を傷つけてまで得るべき見た目の改善はないと考えているからです。術式ごとの特徴はフェイスリフトの5つの術式と回復過程をご覧ください。
李聖郁院長のポイント:血圧の管理、術前後4週間の禁煙、血をサラサラにする薬の相談、持病の申告。この4つが、危険な症状を遠ざけるいちばん確実な準備です。
再手術(2回目のフェイスリフト)のリスク — 危険な症状が増える理由
一度フェイスリフトを受けたあと、再手術を考える方も少なくありません。再手術には1回目とは違う注意点があるため、あらかじめお伝えしておきます。
癒着・線維化で神経の確認が難しくなる
1回目の手術のあとは、組織どうしがくっつく「癒着」と、組織が硬くなる「線維化」が起こります。そのため神経の位置を確かめにくくなり、再手術は1回目よりも難しくなります。
すべてが修正できるわけではない — 現実的な期待値
1回目の手術で生じた変化が、再手術ですべて元どおりになるとは限りません。私は手術の前に、改善できることと難しいことを率直にお話しし、現実的なゴールを一緒に決めるようにしています。
再手術は傷跡が落ち着く6〜12ヶ月以降に判断
再手術は、傷跡や組織が落ち着く術後6〜12ヶ月以降に判断するのが原則です。それまでは、気になる部分があっても経過を見ながらご相談ください。
李聖郁院長のポイント:再手術は癒着と線維化のため1回目より難しくなります。6〜12ヶ月待ち、現実的な期待値を確認してから決めましょう。
フェイスリフト 危険な症状のよくある質問(FAQ)
フェイスリフト後に血腫ができたらどうすればいいですか?
片側が急に腫れる、張りつめた痛みが強くなるといった変化があれば、すぐに当院へご連絡ください。早く見つかった血腫の多くは、局所麻酔で血を抜く処置で回復します。術後24時間がもっとも大切な時期です。
フェイスリフトの血腫が起きる確率はどのくらいですか?
Baker DC の教科書3,500例データでは、女性約1.5%・男性約4.0%です。別の教科書シリーズでは女性2〜3%・男性最大8%と報告されており、研究によって差があります。
どんな症状なら様子を見てもよいですか?
両側がほぼ左右対称に腫れ、日ごとに引いていく腫れや内出血は正常な範囲です。片側だけ・急に・硬く・痛みが増す場合は、フェイスリフトの危険な症状と考えてご連絡ください。
フェイスリフト後の顔面神経の麻痺は元に戻りますか?
Baker DC の教科書3,500例データでは約0.1%とまれで、報告例はすべて6ヶ月以内に回復しています。表情の左右差が24時間以上続く場合は受診してください。
なぜ再手術はリスクが高くなるのですか?
1回目の手術後に起きる癒着や線維化で、神経の位置を確かめにくくなるためです。傷跡が落ち着く6〜12ヶ月以降に、現実的な期待値を確認したうえで判断します。
マイン美容外科・皮膚科でのご相談について
フェイスリフトの危険な症状がどのくらい起きやすいかは、顔の構造や血圧、喫煙歴、持病によって一人ひとり異なります。マイン美容外科・皮膚科では、対面またはオンラインのカウンセリングで、手術前の準備から術後に注意すべきサインまで丁寧にご説明します。
日本語スタッフが対応しますので、LINE・オンライン相談、またはお電話(+82-2-516-1175)でお気軽にお問い合わせください。帰国後に気になる症状が出た場合も、同じ窓口でご相談いただけます。フェイスリフトのほかの記事はフェイスリフトの記事一覧からご覧いただけます。
著者・監修:李聖郁(イ・ソンウク)代表院長(形成外科専門医・大韓形成外科学会正会員)
すべての手術には一定のリスクが伴います。
※ 本コンテンツは情報提供のみを目的としており、医療上の診断や治療に代わるものではありません。施術結果には個人差があり、副作用が生じる可能性があります。詳しくは専門医にご相談ください。
